2011年6月22日水曜日

災害と建物修繕

東日本大震災から3ヶ月が経過しました。原発事故の問題も加わり、被災地の方々には、心からお見舞いとエールを送りたいと思います。

さて、地震で建物が壊れた時、所有している建物ならば、住宅ローンはどうなるか、が今一番の関心事です。二重ローンの負担を避けるための法的スキームが国会で議論されています。震災という予想外の出来事ととはいえ、金融機関がローン債務を免除することにするには要件の検討が重要です。金融機関の貸倒れを招かない対策も必要ですが、免除益が発生してしまうと税法上の問題をどのように解消するかも、焦点となっています。

なお、亡くなった方が住宅ローンの支払い途中だったという場合には、ほとんどの金融機関では、住宅ローンを組む時に、「団体信用生命保険」という保険への加入を義務付けていますので、団体信用生命保険により、住宅ローンがなくなることがあります。

次に、所有している建物であれば、修繕に地震保険の適用が気にかかるところです。扱いは以下の通りです。
全損・・・重要構造部の損害額が時価の50%以上、又は、焼失・流失した床面積が70%以である損害
半損・・・主要構造部の損害額が時価の20%以上50%未満、又は、焼失・流失した部分の床面積が20%以上70%未満である損害
一部損・・主要構造部の損害額が時価の3%以上20%未満の場合、又は床上浸水あるいは地面から45㎝を超える浸水の場合
 
また、「住家被害認定」という言葉を耳にしますが、これは被災世帯の生活再建のための支援金等の支給の前提として、地震による建物被害の程度を示すものであり、地震保険の判定とは異なるため、齟齬する場合があります。住み家が居住のための基本的な機能を喪失したり、倒壊や流失で補修しても元通りにして再利用することが困難になったりして「全壊」と判定されても、全損とならない場合は考えられます。

賃貸建物の場合は、残りの部分だけでは、賃貸借の目的が達せられない場合、借主は契約解除することができます。まだ使用できる場合には契約は存続しますが、滅失部分の割合に応じて賃料の減額を請求することができます。
貸主の側は、破損した建物を修繕する義務を負いますが、雨漏りや水漏れよる借主の家財道具の損害についてまで賠償責任を負うものではありません。

そのほか、貸主が、罹災法での適用がある場合には(適用対象地区は政令で定めます。)、貸主が新しい建物を建築した場合に、借主は優先入居することができますが、今のところ、適用するという動きはありません。罹災法は、いろいろな問題点を抱えており(日弁連は、適用に反対の意見書を提出しています。)、阪神淡路大震災の際には、すぐに適用されていますが、今回は、3か月経過しても適用されていないことから、最終的に適用されない可能性が高いのではないか、と思われます。

災害時に限らず、自宅も事業用建物も重要な財産です。トラブルの解決には法律の解釈や基準がものをいいます。参考にしていただければ幸いです。(k)

2011年5月18日水曜日

震災で得する企業と非難されないことも大切です

東日本大震災で、多くの事業者が設備を失ったり損傷したりの被害を受け、東日本地域への製品輸送にも大きな影響が出ています。一刻も早く生産活動を再開したい、そのため、必要な原材料、部品、製品、サービスの至急の供給を求められている企業も多いことでしょう。
業者間での協力は不可欠ですが、閉鎖的な情報網で相手先や供給量を決定するとカルテルといわれかねないといった心配もあるように思います。
情報交換を行う事業者間での目的を明確にし、目的に限定した対応であることが確認できるように配慮しておきたいものです。
公正取引委員会は3月18日「被災地への救援物資配送に関する業界での調整について」を発表し、独占禁止法違反にならないように、ケースを挙げて説明していますので、参考になります。
震災に乗じた取引と言われないよう、気配りにご注意願います。<K>

関連サイト 
公正取引委員会の東日本大震災に関連するQ&A 

2011年4月4日月曜日

敷引契約の有効性

消費者契約法が施行後、マンション等の賃貸借契約でこれまで当たり前とされてきたことについて、法的な見直しを迫る裁判例が相次いでいます。明渡にあたっての原状回復の費用を全て借主に負担させ敷金から引いていいのかどうか、契約更新のたびに家主は更新料を請求できるものなのか、等々。
今般、関西地方を中心に居室の賃貸借契約で慣行的に行われてきた敷引契約(明渡時に、明渡までの賃貸期間に応じて一定金額を保証金から当然控除し、その代わり通常の使用や経年によって自然に生じる損耗については、借主は原状回復を要しないという特約)について、最高裁の判決がでました(H23.3.24最判)。敷引契約が消費者契約法10条に反して、消費者である借主の利益を一方的に害するものではないか、という問題意識から訴訟が提起され、高等裁判所段階では、無効なのかどうか判断が分かれていました。最高裁は、一律に無効とはせず、補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金、更新料等の一時金の授受の有無やその金額を判断要素として、敷引金が高額にすぎるときは、賃料の近隣相場と比較して、大幅に低額である等の特別の事情がない限りは、信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するもので、消費者契約法10条により無効となるという判断を示しました。問題の事例では、敷引の金額が、2倍弱ないし3.5倍強にとどまり、更新料として更新時に1ヶ月分の負担があるほかは礼金等の支払義務がないことを理由に、敷引の金額が、「高額に過ぎる」ものではなく、無効であるとはいえないとしています。
判断材料は一応示されているものの「高額に過ぎる」という評価を含む判断基準なので、どの辺りまでが限界なのかははっきりとはしませんが、当該事例での上記の判断の仕方をみると、無効となる余地は残しているものの、敷引契約が無効となるのはかなり限られた事例であると思われます。(N)

フレッシュマン採用で、「試用期間」の位置づけにご注意を

4月は新しい職場のメンバーを迎える季節です。新卒者についても中途採用の若手社員についても、時に「就業規則の定める試用期間の定めに従って採用したが解雇したい」という相談がなされることがあります。採用された側からすると、「正社員で入社はずなのに解雇された」という言い分になります。
労働政策研究・研修機構の調査では、試用期間を定めている企業は73.2%にのぼります。また、本採用の拒否事案はその調査の過去5年間内では、13.1%あるそうです。
試用期間については、有名な最高裁判決(昭和48.12.12の三菱樹脂事件判決)があります。その判断では、試用期間中に使用者に留保された解約権の行使、つまり解雇は、通常の解雇の場合より、広い範囲における解雇の自由が認められる、とは述べているのですが、「採否決定の当初においては適格性の有無に関連する事項(資質・性格・能力等)について必要な調査を行い、適切な判定資料を十分に収集することができないために、後日における調査や観察に基づく最終的な決定を留保する」ものだと述べていることが重要な点です。つまり、あくまで、試用期間中の調査結果や勤務状態により新たに認識した事実を根拠とすると客観的に合理的な理由があって、社会通念上も相当と考えられることが必要なのです。
通例、試用期間は2ヶ月から半年くらい。試用期間といえども労働契約は有効です。企業側は、試用期間を商品サンプルのお試し期間のように安易に考えないでほしいものです。また、新入社員側は、正社員になるために学びながら適性をアピールする期間ととらえて、臨んでいただきたいものです。<K>

2011年3月28日月曜日

被災お見舞い申し上げます

東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様方にお見舞い申し上げます。被害の甚大さ、自然の残酷さ、理不尽さを見るにつけ、胸が痛みます。
 私たちに出来ることは、ありきたりな表現ですが、長い目で被災地、被災者の方々を見守り、復興に向けた支援を弛まず続けていくことだと思います。
 また、今後様々な法律問題が生じてくることが予想されます。家が流されてしまったが、ローンは支払わなくてはいけないかどうか、建築途中の家が壊れてしまったが、誰が損害を負担するのか、地震でマンションの配管が壊れ、漏水して、階下の人の部屋が水浸しとなってしまったが、賠償しなくてはいけないか等。
 阪神大震災をきっかけに、災害をきっかけとした様々な法律問題について、Q&A方式で弁護士会がとりまとめたハンドブックがあり、下記の通りネット上で公開されています。
 被災者の方々でお悩みの方々、あるいは、被災者の方を友人、親類にお持ちの方でご相談を受けている方などには、参考になると思いますので、ご案内しました。(N)
http://www.shojihomu.co.jp/0708qa/0708qa.html
http://www.sn-hoki.co.jp/shop/zmsrc/qa50593/mokuji.htm

2011年3月3日木曜日

コンピューターソフト仕様変更でトラブルとならないために

最近の企業活動には、さまざまな文書の作成管理、情報の管理と伝達、集積について、業務管理システムが必要です。コンピューターシステムの利用なしには一日も事が進まないのが実情で、大なり小なりその企業の業務に関して、コンピューターシステムのお世話にならざるを得ないところです。市販のアプリケーションを使うだけでは足らないという場合には、企画立案からカスタマイズされたシステムの基本設計、プログラミング、そしてテストのうえ完成、保守管理に至るまで、システムを開発することが必要であり、システム全体が企業活動を体現しているともいえます。

ソフトウエアの開発を依頼する場合、詳細な条件を記載した契約書があれば、契約の成立時期も、ソフト完成の時期も明確ということになりますが、開発対象が依頼者と開発を受託した事業者との共同作業により進行することが多いため、それが、準備的な段階なのか、契約した作業(債務)の履行の段階なのか、不明確になって、トラブルを生じることも少なくないようです。
①正式契約をしないのに作業を開始してしまった、②作業にあった契約形態になっていない、③契約に不備があるといったものが、主たるトラブルであると、経済産業省の情報システム・ソフトウエア取引トラブル事例集(2010年3月)では考察しています。

システム開発会社からの提案について、具体的な提案であるか、何についての承諾なのかを明確にしておくことが、望まれます。基本契約書を結んでおき、システム開発の各段階における作業の内容と責任分担を決めておく、個別のシステム開発がどのような手順で契約成立に至るのか、共通の認識にしておくことが肝要です。また、仕様の変更により、追加の報酬が問題になるケースも良くトラブルで見かけます。
当初の予定内容を変更する場合にも、変更提案書の交付と協議のうえ了解した記録を残しておく、協議が整わなければ契約は終了すること等をあらかじめ契約書に定めておくことは、大切なことですが、これがなかなか行われていないようです。備えあれば憂いなし。もう一度契約書をチェックしてみませんか。<K>

2011年2月1日火曜日

続・ネット配信録画トラブル-最高裁の2つの判決

今月1月18日と20日、最高裁判所が、相次いで、テレビ番組をインターネットで配信するサービスについて、著作権違反が問われたケースで、破棄差し戻しという判決を出しました。以前に、「 お客様の便宜を図る業者の責任とは?-ネット配信録画トラブル」ということで紹介していたので、続編ということで、ちょっと紹介します。(第3小法廷1月18日)、「ロケフリ」、ロケーションフリーという商品で地上波アナログ放送のテレビチューナーを内蔵し、受信する放送を利用者からの求めに応じてデジタル化し、インターネットを介して、そのデータを自動的に送信するというサービス。
もう一つは(第1小法廷、1月20日)、「ロクラクⅡ」、利用者が子機ロクラクを操作して、親機の設置されている地域で放送されている放送番組等の録画を指示し、これも、親機にて地上波アナログ放送の受信した放送番組をデジタル化してインターネットを介して子機に送信するサービスです。
サービス事業者は、複製をしているのは、利用者本人であり、私的利用を目的とする適法な複製であると主張して争いましたが、いずれも、最高裁は、複製物を取得することを可能にするサービスで、そのサービスの提供者が支配管理下で枢要な行為をしていると判断し、管理状況について、さらに審理を尽くさせるように原審に差し戻されました。結果はサービス事業者を訴えた放送局の逆転勝訴でした。
前者は、機器は譲渡、有償で預かり管理、国内外でのサービス、後者は、録画の複製、機器は貸与、海外転送サービスという違いはあります。しかし、管理する主体はサービス事業者であるという点では、同様な判断がなされたようです。
デジタル技術、インターネットという新しい技術に、著作権法が追いついていけていないのが実情です。膨大に費用をかけて番組制作を行っている放送局の利益保護とサービス利用者の利便性の調和をどう考えるか、問題です。立法的な解決やルール化が急がれるのは言うまでもありません。後者の判決では、カラオケスナック店の著作権(演奏権)侵害が争われたケースでかつて判決に示された「カラオケ法理」-管理支配性と営業上の利益という二つの要素に着目してカラオケ店主を行為の主体と判断した判断規範-に触れ、カラオケ法理も時代によって変わりうるものであり、この法理を特別な法理として安易に用いることに警鐘を鳴らしています。<K>