2012年4月16日月曜日

家族は味方?それとも敵?①-平成24年4月1日から民法等の一部改正が施行されました

最近、離婚届の用紙に、養育費の取り決めをしたかどうかといった記載欄が設けられました。昨年の民法の一部改正で、「離婚後の子の監護に関する事項の定め」について、「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定めるものとし、この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない」とされたことによります(第766条関係)。

また、民法において、親権停止制度が創設されるとともに親権喪失や管理権喪失の原因も見直され、子の利益が害されている場合に親権が制限され得ることが明確になりました。また、親権を制限した後の子の安定した監護を実現するために未成年後見制度も見直されました。そのほか、親権者は子の利益のために監護教育をすべきことが明確化されました。これらの法がこの春から施行されました。

これに呼応して、児童福祉法の改正では施設入所等の措置がとられている子の監護等に関し、子の福祉のために施設長等がとる措置を親権者等は不当に妨げてはならないことが明確化されました。親権の停止制度や児童相談所所長の権限強化などの改正は、近年、深刻な社会問題となっていた児童虐待を背景とするものです。児童虐待を行う親への対応としては親権喪失制度がありましたが、要件も効果も重く、活用しにくいと指摘されていました。児童虐待のように親権の行使が不適切な場合に、必要に応じて適切に親権を制限することができるようにする必要があり、また、親権を制限した後には、親権者に代わって子の身の回りの世話や財産の管理を行う適任者を確保する必要があります。このような必要性を踏まえて、児童虐待の防止等を図り児童の権利利益を擁護する観点から、民法や児童福祉法その他の法律が改正されたのです。

親権を行使する親がいない場合には、未成年後見人として複数の者や法人を選任することができることとされました(民法第840条第2項及び第3項関係)。これにより、複数の者や法人が学校教育法第16条に定める保護者になり得ることとなることとなりました。

少子化の中にあっても、子どもは大人の勝手に振り回されている?家族の中で常に幼き人(子ども)を大切にしたいとみな願っているのでしょうが・・・。<K>

2012年3月7日水曜日

部下や同僚からもあるパワーハラスメント

職場でのいじめやパワーハラスメントが社会問題とされて久しいところですが、厚生労働省は、今年1月30日、職場におけるパワーハラスメントの定義を発表しました。この発表は、同省が円卓会議ワーキング・グループを立ち上げて検討した結果に基づくものですが、興味深い資料が示されています。
ワーキング・グループが取りまとめた報告書では、パワーハラスメントとは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的な苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」であると定義されています。そして、6つの類型を掲げています。
① 暴力・傷害(身体的攻撃)
② 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的攻撃)
③ 隔離・仲間外れ・無視(人間関係からの切り離し)
④ 業務上、明らかに不当なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
⑤ 業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
⑥ 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
こうした定義からすると、パワーハラスメントは上司から部下への行為だけでなく、同僚間や部下から上司への行為もありうることとなります。例えば、圧倒的に情報を握っている部下が、新しい上司にわざと情報を提供しないで嫌がらせをするといったケースです。
パワーハラスメントの言葉の登場とともに、どこまでが指導でどこからがパワハラ(嫌がらせ)なのか、その境界線が明確ではない、と具体的な対応に戸惑うという声も企業側から聞こえてきます。業務上の必要な指導に対しても「パワハラ」だと捉えて被害を声高に主張する部下もいれば、上司の方もパワハラと指摘されることを恐れて管理や指導をしづらくなる、などの過剰反応も現れているようです。
パワーハラスメントを原因とした自殺を労災と認めた判決例も出されています。今後、パワーハラスメントに対する認知度の高まりとともに、訴訟の増加が予想されます。働く現場の状況や管理する企業の安全配慮義務を見直すことは、大切です。
ワーキング・グループは、本年3月を目途に予防策を提言するとりまとめを発表する予定とのことで、注目されます。<K>

2012年1月18日水曜日

「自炊」はダメ?書籍読み取り代行サービスの行方

インターネットの通販サイトで電子書籍を買い求める方も少しずつ増えているようです。日本でも数社が新刊本のすべてを電子化すると発表しています。手元に自分の好きな本を、あるいは好きな部分だけ、軽々と情報として持ち歩けるとすれば、それは便利です。しかし、まだまだすべての本が電子化されているわけではありません。
書籍をページ毎にスキャナーなどでコンピューターに取り込み、電子ファイル化する、いわゆる「自炊」行為を行う業者は、昨年から増え、100社に上ると見られています。
そのような中、昨年12月、書籍を個人利用者が電子化する「自炊」行為の代行は著作権法に違反するとして、浅田次郎さん、東野圭吾さん、弘兼憲史さんら小説家や漫画家7人が、代行業者2社に、代行事業の差し止めを求めて東京地裁に提訴しました。代行業者は、個人利用者の注文を受け、著作者の許諾を得ずに、1冊数百円で「自炊」を行っていることをとらえて、利用者が個人的な目的で自炊を行う場合は、著作権法第30条で「私的使用のための複製」として認められているが、「業者が大規模に、ユーザーの発注を募ってスキャンを行う事業は複製権の侵害」と指摘。さらに事業者が大量に製作した電子ファイルがインターネットで拡散するなど、作家や出版社に深刻な影響を及ぼすと主張しています。
現在の著作権法の下では、私的使用目的の複製は許容されており(同法30条1項)、私的使用にとどまる限りは著作権侵害の問題を生じません。自分の蔵書を「自炊」することは問題がありません。しかし、業者に「自炊」を代行させていることの適法性については、意見が分かれるところだと思います。
電子化された作品は容易にコピーされ、海賊版が大量に流通しかねないことはその通りです。自炊代行が横行する背景事情には、利用者にとって欲しい電子書籍の点数が、少ないという現状があります。上記の事件の結論が出たとしても、日本の電子書籍市場のサービスの整備、単価の適切な設定など、電子コピーが容易な時代に対応した新しい著作権のあり方を検討する必要が急がれています。
例えば、アメリカでは、グーグル社がいろいろな大学の図書館と提携して、その蔵書をスキャンし、データベースを作って、インターネット上に書籍の検索サービスを提供しています(著作権切れのものは全文表示、許諾あるものは最大20頁程度のプレビュー表示、他に本文から抜粋した3,4行を数カ所スキャンしてのせるスニペット(抜粋)表示など)が、これに対して、米国作家協会ほかからグーグルに著作権侵害訴訟が起こされたことがありました。大学の図書館の蔵書の著作権者全員を原告とする集団訴訟(クラス・アクション)として提起されたことでも注目を浴びました。2008年10月に原・被告間で成立した和解は、大学図書館の蔵書の著作権者ばかりでなく、およそ地球上で出版されている書籍に対してアメリカ法上著作権を持っている人すべてにまで、極めて広い範囲に拡大され、原告集団に属しているすべての人が、異議を申し立てない限り(オプト・アウト方式)、その書籍をインターネットで全文配信するライセンスをグーグルに与えるというものでしたが、最終的に、昨年3月アメリカの裁判所は、和解の効力を与えませんでした。
新しいデジタル情報の時代に入り、著作物を電子データに置き換えることから招来される問題は、デジタル情報に適した権利の管理が求められていると思われます。<K>

2011年12月12日月曜日

平成23年特許法の改正の施行決まる~通常実施権の当然対抗制度~

今年23年6月に公布された特許法の施行が、24年4月1日からと決まりました。改正の要点は、
1 通常実施権の当然対抗制度
2 冒認出願において真の権利者の救済
3 迅速な紛争解決のための再審
4 新規性の喪失の例外規定の緩和
などです。

 今回の改正で、特許権者からライセンス契約により通常実施権を受けていたライセンシーは、特許権者であるライセンサーが第三者に譲渡した場合、登録等を要せずに当然に特許件を譲り受けた第三者に対して、自己の通常特許権を主張することができるようになりました(当然対抗制度)。改正後の特許法99条は、「通常実施権は、その発生後にその特許もしくは専用実施権またはその特許権について専用実施権を取得した者に対しても、その効力を有する」としています。つまり、従来の登録制度下で見られた譲受人から差し止め請求や損害賠償請求を受けないということです。また、ライセンサーが破産した場合にも、破産管財人の解除権は認められないことになります。

この改正で、特許法が準用されている実用新案権や意匠権についても、当然対抗制度が導入されることになりました。他方、商標権や著作権については、当然対抗制度は認められません。

通常実施権は、ライセンス契約で定められますが、通常実施兼の許諾だけが書かれているわけではないので、その他様々な契約上の権利義務の取り扱いについては、改正後の枠組みで、どう考えたらよいのでしょうか。審議はなされたようですが、今回の改正ではライセンス契約関係が譲受人に承継されるか否かについては、個々の事案に応じて、判断されるのが望ましいというところに落ち着いたようです。

実際、複数のライセンス契約に基づき、多数の通常実施権が許諾されていることも多いので、そのすべてを登録することの手間とコストから、登録制度は活用されなかったため、アメリカやドイツ同様に当然対抗制度を採用したものです。

いずれにせよ、特許権を譲受けようとする場合取引の安全を保護する規定がない実情では、譲受けの際のデューディリジェンスが大切です。<K>

2011年10月18日火曜日

クレーム(特許請求の範囲)の文言解釈、切れ目の入れ方で特許侵害を争った切り餅事件~越後製菓VSサトウ食品~

切り餅の業界で、1位と2位の会社が争いました。越後製菓が、サトウの切り餅で知られるサトウ食品工業に切り餅の切り込みの特許権を侵害されたとして、サトウに製品の製造販売の差し止めと損害賠償を求めました。
1審では、侵害はないとされましたが、平成23年9月7日、知財高裁は「サトウ製品が越後の発明の範囲に含まれる」と判断して、一転して、特許権侵害を認める判断を示しました。この中間判決を前提に、今後は、差止範囲や損害賠償額の算定が審査されます。

越後製菓は、餅に切り込みの入った、焼いても中身が噴き出しにくい切り餅を開発したとして、平成14年に特許を出願しました。佐藤の方は、側面に加え、上下面にも切り込みを入れた商品で、15年に出願し、ともに特許登録が認められました。

その判断が分かれたのは、請求項の文言解釈です。「載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け」という請求項の文言について、冒頭の部分が読点が付されることなく続いているのであって、そのような構文に照らすならば、冒頭の「載置底面又は平坦上面ではなく」との記載部分は、その直後の「小片餅体の上側表面部の立直側面である」との記載部分とともに、「側周表面」を装飾していると、解釈文言を述べています。つまり、読点の付し方がとても重要と言っています。
また、特許の作用効果として、切り餅の側周表面の周方向への切り込みによって、膨張による噴き出しを抑制する効果があることを利用した発明であって、底面や上面に切り込み部を設けたために美観を損なう場合が生じるからといって、そのことから直ちに、底面又は上面に切り込み部を設けることが排除されていると解することは相当ではない、として、明細書の記載、特に作用効果のクレーム解釈を述べています。

さらに、知財高裁は、出願の経過についても検討を加えています。越後製菓は、出願に対する特許庁の拒絶査定に対し、その拒絶理由を解決しようとして、手続き補正を行い、切り餅の上下の底面又は上面ではなく側周表面にのみ切り込みが設けられる発明であると意見を述べましたが、審査官から新規事項の追加に当たるとの判断が示されたため、再度の補正を行い、意見を撤回しました。その経過からすると、上下面に切り込みがあってもなくても良いと主張していた、と判断されたものです。

このような判断で、知財高裁は、文言通り側面のみの切り込み技術に限定されるとの一審の判断を覆しました。

餅屋は餅屋というように、物事にはそれぞれの専門があるわけですが、その意図する技術の目指すところ、コンセプトがものをいう、という印象の感じられる事件でした。
特許申請の請求項でなくとも、文章において、句読点の位置は人生を左右することもある重要な「点」ですね。<K>

2011年9月6日火曜日

こんな程度のことで?の感覚では許されない賄賂~対岸の火事ではない英国賄賂法~

円高で日本企業の中には、生産、販売拠点を海外に移そうとお考えの企業は多いと思います。現地での情報収集は大切ですが、国内本部からの出向者の知らないところで、例えば、契約しているコンサルタントや代理店が公務員や取引先に賄賂を渡していたら、日本の本社が処罰対象になることがありうるのです。ことさら便宜を払ってもらおうと言った意味の賄賂でないチップも処罰対象となれば、いい加減には済まされません。

1977年に制定されたアメリカ海外腐敗行為防止法(FCPA)による摘発、処罰の件数が昨年は80件に上ったそうです。日本企業も摘発されています。日揮がナイジェリアで米国などと共同で参画したLNGのプラント施設で政府関係者に贈賄行為をしたとして、アメリカ司法省と約180億円和解金を支払い、起訴猶予の司法取引をしたといったことが報道された例があります。
摘発例はきかないものの、日本の法律でも、外国公務員等に対し営業上の不正の利益を得るために不正の利益供与、つまり賄賂の提供やそうした申し込みについて、日本人の国外犯も処罰対象としています(不正競争防止法18条、21条2項6号、同条6項、刑法3条)。

今年7月に施行された英国賄賂法改正は、さらに厳しく贈収賄を規制しようとしています。英国企業だけでなく、英国でビジネスの一部をする企業も対象となり、当然、日本企業も対象となります。日本の不正競争防止法は、国外での贈賄行為は日本企業、日本国民に限定していることと比べても、大変厳しいものです。

注意すべき英国賄賂法の特徴としては、①個人の責任だけでなく、会社の刑事責任を規定していること 、②英国内だけでなく世界中で発生した贈賄行為が処罰対象となること 、③贈賄の対象は、英国の公務員、英国以外の外国の公務員のほか、私人に対する贈賄も処罰対象となること 、④外国公務員への贈賄については例外規定を設けていないこと 、⑤贈収賄の対象となるビジネスが英国と関係ないものであっても、英国において事業拠点があるだけで、会社の刑事責任が発生すること、⑥企業が贈賄を防止できなかったことに基づき刑事責任を問われた場合、企業側に唯一許される防禦方法は、贈賄防止のための「適切な手続を実施」していたことを企業側で反証すること、などです。個人については10年以下の禁固または罰金、法人について金額の制限ない罰金と法定刑も重く、公訴時効の概念もないので、見方によっては世界で最も厳しい贈賄規制法とも言われます。

企業が免責されるのは、賄賂を防止するための適切な仕組み」していたかによります。自社が晒されている贈賄リスクの性質と範囲について定期的かつ総合的にアセスメントすることが必要ですし、贈賄は許されないという経営陣の考えを社内外に伝えることも不可欠であると、英国賄賂法は規定しています。賄賂企業とならないガバナンスは重要です。<K>

2011年8月25日木曜日

高齢者住まい法をご存知ですか?

 4人に1人が65歳の高齢者という時代。最近の傾向として、歳を取ったら、住み慣れた自宅にこだわらないで他に移るという選択をする方々が増えているという調査結果があります。高齢者だけの世帯も増えていて、不安を抱えるよりも、サービスを得て安心して暮らしたいという気持ちの表れのように思います。
 平成23年4月に高齢者の居住の安定確保に関する法律、いわゆる「高齢者住まい法」が改正されました。「有料老人ホーム」と「高齢者専用賃貸住宅」(居室の賃貸借契約で、生活関連サービスは任意)を一元化(統合)する制度として、登録制の「サービス付き高齢者住宅」という法律概念が創設されました。介護・医療サービスと連携して安心して暮らせる住居の提供を社会全体で後押しする、という目的です。
 床面積や建物の構造などのハードだけでなく、前払い金の返還、契約前の書面の交付や説明など、事業者として守らなければならない事項の規制があります。
 ここ数年、入居したらパンフレットと違っていた、あるいは入居して3ヶ月もたたないうちに解約して退去したが入居一時金の殆どが返還されない、といったトラブルが相次いでおり、こうした事案についての判例も出されています。こうしたことにも対応しようということでもあります。
 入所施設の経営は、福祉系の施設には設置主体に制限がありますが、有料老人ホームには特に制限がありません。高齢者ビジネスを考える上で、家賃相当額を基準にした入居権利金、一時金の設定や適切なサービス、その表示の仕方などを考えますと、今しばらくは、こうしたビジネスチャンスの中で、淘汰される事業者がかなり出てくるものと思われます。(K)