2013年1月25日金曜日

薬のネット販売は解禁される方向へ・・そもそも省令で禁止すべき?

  本年1月11日、ネット通販2社(ケンコーコムとウェルネット)が国を相手に大衆薬の販売権の確認を求めた訴訟で、最高裁が、これを禁じた「厚生省令は違法で無効」とする判決を下しました。
 
  そこで、厚生労働省は、省令で原則禁止してきた一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売を条件付きで解禁する方針を決めました。地裁では2社が敗訴、高裁では逆転勝訴、さらに最高裁で決着がついたという経過です。 最高裁が認めたのは、ネット販売を省令で禁止しているのは、薬事法から委任された範囲を逸脱していて違法であるということであり、薬事法の改正は今後の検討課題ということになります。
    
   医薬品の取り扱いは利用者の健康や安全に関わるため厳しい規制が課されています。医師の処方箋がなくても買える薬である大衆薬の販売は、原則として薬剤師のいる薬局やドラッグストアに限られていました。2009年6月施行の改正薬事法では、大衆薬を副作用のリスクの高さによって第1類(H2ブロッカー含有薬や一部の毛髪用薬など)、第2類(主な風邪薬や解熱鎮痛薬など)、第3類(主な整腸薬や消化薬など)の3つに分け、副作用リスクが低い第2、3類は薬剤師がいなくても「登録販売者」の資格を持つ人がいれば販売できるようになりました。登録販売者は薬剤師より取得しやすい資格なので、一部のスーパーやコンビニエンスストアがこれを機に登録販売者を置いて大衆薬の販売を始めました。

    一方、旧薬事法で認められていたネット通販は規制が強化されました。改正薬事法に規定はありませんでしたが、厚労省は省令によって第1類と第2類について「店舗で対面で販売させなければならない」と定め、ネット販売を原則禁止していました。対面販売により、薬剤師や登録販売者が医薬品の副作用などについて利用者に直接説明しなければ、健康への被害を防げないと判断したためです。それまで大衆薬を販売していたネット通販企業はこの規制に強く反発し、争っていたのです。 体が不自由で薬局へ行けない人や、身近に薬局のない地域に住む人たちなどは不便なため、利用者からも規制の見直しを求める声があがっていました。

   今後は、規制緩和で、ネット企業や流通業者が医薬品販売への参入が加速する可能性があります。日本チェーンドラッグストア協会は、昨年9月「医薬品は本来対面で提供されるべき」という姿勢を示しつつ、安全にネット販売するためのルール整備が必要という認識を示しています。 最高裁の判決はネット販売の是非については判断しておらず、全面解禁を容認したわけではありません。判決当日、厚労省は、大衆薬のネット販売手法に関する検討会の設置を決めました。今後、安全性を確保するためのネット販売の情報提供ルールづくりを進める見込みです。安全性と利便性を両立するルールをつくれるかが注目されます。

   今後は国会で、薬事法の改正が議論されることになりますが、仮にネットと店舗(対面販売)の垣根は外される方向になるとしても、消費者がその両者を使い分けることが可能なように、必要な情報や商品知識の提供が必要だと思いますし、業界のエゴで健康に関わる権利が制限されないように願いたいものです。<K>

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