2012年8月3日金曜日

メンタルヘルス不調に対処するには

誰でも好んで心の病気にかかるわけではありませんが、メンタルな面で何かと悩みを抱えてしまうと本人も周囲も対処に困ります。最近では、仕事中はうつで、仕事以外の時間は元気といわれる「新型うつ」という言葉も使われるようになり、ますます周囲としては理解しがたい面もあります。しかし、メンタルヘルス不調に関係する労働分野でのトラブルは増加しており、厚生労働省が毎年発表している「精神障害等に係る労災補償状況」に見る請求件数は、平成12年には212件だったところ、平成22年には1181件、認定件数は12年36件に対して22年では308件と急激な伸びを示しています。

業務上のことに起因するメンタル不調はまさしく労災に値するとして対処すべきことで、業務上の理由で負傷したり病気になったりして休業している期間及びその後30日間は、会社は従業員を解雇することはできません(労働基本法19条)。

また、最近では、入社して間もなく精神的な不調を訴えて休暇を主張する人も少なくないようです。会社としては対処に苦慮するケースもあり、このような場合に備えて、試験採用期間を設けたり、私傷病による休業制度の対象者を一定の勤続年数以上の従業員に限る、といったような制限的な休業制度の適用を行うことも見受けられます。もっとも、会社によっては、業務内容や職種によって、復職を期待すべき業務と考えられるのか、充分な検討が必要です。就業規則に、こうした場合の休業命令や休業制度についてのひな形を安易に書き入れたりすると、かえって対処に苦慮するケースも見受けます。従業員は会社にとって重要な財産ですが、休業制度は解雇猶予の意味合いを持つものであり、慎重な検討が望まれます。

病気休暇の取得には、診断書の提出が求められますが、詐病が疑われる場合や診断書の記載が抽象的な場合には、会社としては、本人のほか、診断書を作成した主治医にも従業員の職務内容や作業環境を説明して診断の内容を聴き取ることが求められます。また、産業医の診断を受けるように勧めることも検討すべきです。いずれにしても、従業員の同意を得て進めて下さい。

就業規則などで規定しない限り、復職支援の制度化は会社の法的義務ではありませんが、厚生労働省の策定した復職支援プログラムも参考になります。

復職後も再び不調を訴え、休職・復職を繰り返すような場合には、会社は従業員とどこで折り合いをつけるべきなのでしょうか。就業規則では、通常、「心身又は精神の障害等により業務の通行に耐えられないと認められる場合」を解雇事由として定めていることが多いですが、直ちにこの場合に該当するかどうかの判断が難しい面もあります。

休業制度の利用制限など(例、復職後一定の期間に同一または類似の病気で欠勤するとき休職期間を復職前の休職期間と通算する。同一または類似の傷病については1回限りとする、など)の調整規定を設けるなどの工夫も有効な手立てといえると思います。<K>