2012年4月16日月曜日

家族は味方?それとも敵?②-「後見支援信託」制度が始まりました

4月1日から、後見支援信託という制度が全国の家庭裁判所で導入されました。認知症などで判断力が衰えた高齢者らの財産を守る「成年後見制度」に信託契約を利用した新しい仕組みが導入されることになりました。
この仕組みが考案された背景には、親族後見人による被後見人の財産侵害があります。平成12年に導入された成年後見制度ですが、年度における開始件数は、平成21年には、12年開始当初の4倍超となっていますが、親族による財産侵害もまた増加しています。

最高裁判所は、後見申立があった場合に、専門職後見人において、その後の生活計画を立てさせ、日常生活に必要な一定のお金を残して、それ以外の財産(不動産を除く)を原則として換価させて、信託財産として預けさせます。信託は後見人と信託銀行が契約を締結し行います。専門職後見人は辞任し、その後は親族である後見人によって管理されますが、当初の計画にないものについては、裁判所の指示書がないと信託財産から取り出すことができません。

後見対象者である高齢者らの金融資産のうち、当面使う必要のない大きな資産は、元本が保証される信託契約を結んで信託銀行に預けることとし、日常的に使用する少額のみを一般口座で、親族などの後見人が管理するということになります。

例えば、住宅リフォームなどで、大きな支出が必要になった場合は、後見人が家庭裁判所に申請してチェックを受け、家庭裁判所が本人のための支出だと認めれば「指示書」を発行して信託財産からの支出を認めるという手順になります。

今回の制度は、財産の保全に主眼が置かれている印象もあり、後見人本人の権利保護や身上監護が後退するのではないか、本人のための財産利用が抑制的になる、さらには、後見事件一般へ信託制度が波及し、後見業務が画一的な取扱いとなるのではないか等の懸念も日弁連の意見書などで指摘されています。本当に被後見人のための支出なのか、親族である後見人にとっての利益ではないのか、立ち止まって考えることが必要です。<K>

家族は味方?それとも敵?①-平成24年4月1日から民法等の一部改正が施行されました

最近、離婚届の用紙に、養育費の取り決めをしたかどうかといった記載欄が設けられました。昨年の民法の一部改正で、「離婚後の子の監護に関する事項の定め」について、「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定めるものとし、この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない」とされたことによります(第766条関係)。

また、民法において、親権停止制度が創設されるとともに親権喪失や管理権喪失の原因も見直され、子の利益が害されている場合に親権が制限され得ることが明確になりました。また、親権を制限した後の子の安定した監護を実現するために未成年後見制度も見直されました。そのほか、親権者は子の利益のために監護教育をすべきことが明確化されました。これらの法がこの春から施行されました。

これに呼応して、児童福祉法の改正では施設入所等の措置がとられている子の監護等に関し、子の福祉のために施設長等がとる措置を親権者等は不当に妨げてはならないことが明確化されました。親権の停止制度や児童相談所所長の権限強化などの改正は、近年、深刻な社会問題となっていた児童虐待を背景とするものです。児童虐待を行う親への対応としては親権喪失制度がありましたが、要件も効果も重く、活用しにくいと指摘されていました。児童虐待のように親権の行使が不適切な場合に、必要に応じて適切に親権を制限することができるようにする必要があり、また、親権を制限した後には、親権者に代わって子の身の回りの世話や財産の管理を行う適任者を確保する必要があります。このような必要性を踏まえて、児童虐待の防止等を図り児童の権利利益を擁護する観点から、民法や児童福祉法その他の法律が改正されたのです。

親権を行使する親がいない場合には、未成年後見人として複数の者や法人を選任することができることとされました(民法第840条第2項及び第3項関係)。これにより、複数の者や法人が学校教育法第16条に定める保護者になり得ることとなることとなりました。

少子化の中にあっても、子どもは大人の勝手に振り回されている?家族の中で常に幼き人(子ども)を大切にしたいとみな願っているのでしょうが・・・。<K>