2011年2月1日火曜日

続・ネット配信録画トラブル-最高裁の2つの判決

今月1月18日と20日、最高裁判所が、相次いで、テレビ番組をインターネットで配信するサービスについて、著作権違反が問われたケースで、破棄差し戻しという判決を出しました。以前に、「 お客様の便宜を図る業者の責任とは?-ネット配信録画トラブル」ということで紹介していたので、続編ということで、ちょっと紹介します。(第3小法廷1月18日)、「ロケフリ」、ロケーションフリーという商品で地上波アナログ放送のテレビチューナーを内蔵し、受信する放送を利用者からの求めに応じてデジタル化し、インターネットを介して、そのデータを自動的に送信するというサービス。
もう一つは(第1小法廷、1月20日)、「ロクラクⅡ」、利用者が子機ロクラクを操作して、親機の設置されている地域で放送されている放送番組等の録画を指示し、これも、親機にて地上波アナログ放送の受信した放送番組をデジタル化してインターネットを介して子機に送信するサービスです。
サービス事業者は、複製をしているのは、利用者本人であり、私的利用を目的とする適法な複製であると主張して争いましたが、いずれも、最高裁は、複製物を取得することを可能にするサービスで、そのサービスの提供者が支配管理下で枢要な行為をしていると判断し、管理状況について、さらに審理を尽くさせるように原審に差し戻されました。結果はサービス事業者を訴えた放送局の逆転勝訴でした。
前者は、機器は譲渡、有償で預かり管理、国内外でのサービス、後者は、録画の複製、機器は貸与、海外転送サービスという違いはあります。しかし、管理する主体はサービス事業者であるという点では、同様な判断がなされたようです。
デジタル技術、インターネットという新しい技術に、著作権法が追いついていけていないのが実情です。膨大に費用をかけて番組制作を行っている放送局の利益保護とサービス利用者の利便性の調和をどう考えるか、問題です。立法的な解決やルール化が急がれるのは言うまでもありません。後者の判決では、カラオケスナック店の著作権(演奏権)侵害が争われたケースでかつて判決に示された「カラオケ法理」-管理支配性と営業上の利益という二つの要素に着目してカラオケ店主を行為の主体と判断した判断規範-に触れ、カラオケ法理も時代によって変わりうるものであり、この法理を特別な法理として安易に用いることに警鐘を鳴らしています。<K>