2010年9月9日木曜日

従業員の過労死で社長個人にも責任が・・

 会社の責任と社長の責任は別です。連帯保証等をしない限り、会社の買掛金その他の債務について、社長個人が責任を問われることはないというのが通常の理解です。
 しかし、会社法には、取締役が、その義務を執行する上で、悪意または重大な過失があって、任務を怠った結果、第三者に損害を与えた場合には、取締役個人が責任を負うという規定があります(会社法429条1項)。
 飲食店の調理場で勤務していた従業員の過労死(長時間勤務)について、取締役個人のこの会社法上の責任を認めた裁判例が最近出ています(京都地方裁判所平成22年5月25日判決)。この従業員は新入社員で、相当のプレッシャーを感じながら、死亡前の4ヶ月間の時間外勤務が毎月80時間を超え、会社も、1ヶ月間で100時間の時間外労働を6ヶ月に亘って認める労使間の協定(三六協定)を締結したり、基本給の中に80時間の時間外労働を組み込むなどしていました。従業員全般について長時間労働を是認する体制をとっていたもので、従業員に対する生命、健康への配慮が認められず、会社の責任と併せて、取締役の個人責任が認められました。因みに、この会社は一部上場の大企業です。
 コスト管理も大切ですが、働く人の職場環境も大事です。危険管理、労務管理を含めて、管理体制に問題があった場合、取締役の個人責任が追及されることは今後とも増えてくるでしょう。要注意です。(N)

2010年9月1日水曜日

就業規則の改定はお早めに―イクメンを育てていますか?

忙しいけれど、人を雇うからにはきちんと知識を得て変えておかなければなければならないのが就業規則の改定。特に、育児・介護に関しては、平成21年からの改正施行が相次いでいます。今年6月30日には、次の4項目が加わりました。改正のキーポイントは「育休期間を延長」「共働き以外も」拡大。男性の育児参加に注目が集まっています。特に「パパ・ママ育休プラス」規定は話題です。これまで企業に義務づけていた育休が取れる期間は、子どもが1歳になるまででした。この期間を、夫婦ともに育休を取る場合は1歳2カ月までに延長できることになります。たとえば、1歳まで妻が育休を取った後、夫が2カ月間育休を取れるといったようにです。改正前は妻が専業主婦や育休中だと夫は育休を取れませんでした。また、原則として育休は1回しか取れなかったのですが、夫の育休については、妻の出産後8週間以内に取った後、1年2カ月以内ならばもう一度取ることも可能です。労使協定で専業主婦のいる家庭は除外するという規定を設けていた企業もあったかと思いますが、今後はそうした規定は許されません。法改正の背景には深刻な少子化があります。出生率は1・37にとどまり、このままでは現役世代が減るばかり。育児の負担は妻に集中しています。育児休業取得率は女性90・6%に対し、男性はわずか1・23%。夫の家事・育児時間が長いほど第2子以降の出生割合が高いという調査もあります。女性が働きやすい組織や企業は、男性にとっても働きやすい仕事場です。仕事も家庭もどちらもバランスが取れてこそ、気持ちよく働けて効率も上がるはず。ワークライフバランスを大切にしたいものですね。(K)