2010年7月29日木曜日

改正されれば大きく変わる/独占禁止法の新たな展開-審判制度の廃止へ

平成22年平成22年3月、公正取引委員会の審判制度が全面的に廃止される独占禁止法の改正法案が閣議決定されました。国会情勢等でストップしていますが、今年の検討課題であり、不服申立手続が大きく変わろうとしているので注目です!
公取委の排除命令は企業活動に多いに影響を与え、課徴金は最近では算定料率の上昇により制裁的な意味合いを持つ不利益な処分を伴なうようになってきました。不幸にして、公取委の摘発を受けた場合には、新たな制度としての事前手続きの特徴をよく理解したうえ、また、裁判所に対する説得的な主張立証を試みる姿勢が重要になると思われます。
改正法案では、現行52条以下の審判制度に関する条文が削除され、排除措置命令、課徴金納付命令および競争回復措置命令ほかの公正取引委員会の決定に関する不服申し立て(抗告訴訟)は、直接、裁判所にできることになり、東京地方裁判所がその専属管轄権を持つとしています。
もう少し具体的に言えば、公取委の行う事前手続きとして、手続管理官が創設され、聴聞が行われますが、当事者の主張する論点整理報告書が作成され、これは、裁判所での判断にも活かされることになる模様です。現行の手続きでは、証拠について、公取委の担当者から説明を受けるだけですが、改正点として、公取委が認定した事実を起訴づけるために必要な証拠の開示や自社関係者に限り供述調書を謄写することも検討されています。
裁判所での取消訴訟に関しては、被告となる公取委側の主張立証での質と量が議論されるところです。
気になるのは、企業や事業者が排除措置命令を争うとしても、措置命令の執行力は失効しないという現行の制度がどうなるかです。取消訴訟への移行に伴い、執行免除制度は廃止され、通常の行政処分と同様、執行停止制度(行政事件訴訟法25条)により対処することになり、損害の回復困難性を積極的に裁判所に訴えていくことなります。
弁護士の立会権などの手続保証の観点から1年かけて、今後検討されることになっていますが、実務に大きな影響を与えそうです。(K)

第三者委員会

企業、病院、学校、様々な組織で不祥事が起きると「第三者委員会」なるものが立ち上げられることが多くなりました。徹底した原因究明は再発防止につながります。専門家の知見が社会に役立つ場合は少なくないと思います。「第三者委員会」がどんなものか興味のある方は日弁連の最近発表したガイドラインが参考になります。(K)
 

2010年7月26日月曜日

ブログ始めました

 ブログ始めました。
 新しい法令や裁判例の紹介、自分自身が取り扱い、参考になるようなケースなどのご紹介などをしていきたいと思います。
 さて、今回は、今年7月から施行された臓器移植法の改正法の話です。これまでは、本人の書面による積極的な同意がなければ、家族の意思だけでは、臓器提供が出来ませんでした。また、15歳未満の子どもからの臓器提供も、子どもの脳には復元力があって脳死状態にあるといっても未解明な部分があることから、許されていませんでした。そのため、外国へ出かけて移植を受けるといった事例が増え、今回の改正となりました。
 改正法では、本人が積極的に臓器提供を拒否している時はだめですが、本人の意思がはっきりしないときは、家族の承諾で臓器提供が可能となり、また年齢制限がなくなりました。ただ、児童虐待の結果、脳死に至ったような例では、家族の意思で臓器提供をさせるのは妥当でないため、18歳未満の場合は、児童虐待の調査が義務づけられています。
 また、15歳以上の場合は、親族への優先的な臓器提供が認められています。今までは本人の意思がはっきりしている時にしか、臓器提供は認めらませんでしたが、今後は、はっきりしないときは家族が決めることになり、家族としては、本人に聞いたらどういう返事をするだろうかということを考えながら、判断することになります。ただ、脳死状態の人は、人工呼吸器で生かされているとはいえ、外見上は、呼吸もし、肌も血流によりピンクで死んでいるようには見えません。頭では理解できても、心情的にお別れが出来ていない段階で、臓器提供を求められ、家族が重い決断を迫られる場面が今後は増えてくると思います。これを機会に、万が一の場合にどうするのか、例えば、もし交通事故に遭って脳死状態になり、臓器の提供を求められたらこれに応じるのかなど、家族でじっくり話し合ってみるのもいいのかもしれません。家族の絆が深まるきっかけにもなると思います。(N)